「50mmF1.4」の先駆け的存在 : NIKKOR-S AUTO 50mm F1.4
1962年発売開始、「NIKKOR-S AUTO 50mm F1.4」の紹介です。
PENTAXの「Super Takumar 50mm F1.4」が1964年、CANONの「FL 50mm F1.4」が1965年の発売ですから、「50mmF1.4」としては先駆け的存在、そしてNIKONのレンズの歴史を語る上で、欠かせない存在と言えるでしょう。
1976年に光学系が一新(5群7枚→6群7枚化)されるまで14年間にわたり製造されました。かなりの数が製造されたので、中古市場でも簡単に見つけることができます。そこそこの程度のものが安価に入手できます。
「Nikkor-S Auto」時代の筐体にはいくつかのバリエーションが存在します。すべてクロームリングで、一見しただけでは見分けは付けにくいのですが、「絞り枚数」「マウント面の台座固定ネジの有無」「銘板の変更」が順次行われています。その歴史をざっくりまとめると下記のようになります。
- 1962年 Nikkor-S Auto 6枚絞り 5群7枚 銘板:Nippon Kogaku Japan 台座ネジ:無
- 1966年 Nikkor-S Auto 7枚絞り 5群7枚 台座ネジ:無
- 1967年 Nikkor-S Auto 7枚絞り 5群7枚 台座ネジ:有
- 1971年 Nikkor-S Auto 7枚絞り 5群7枚 銘板:Nikon
- 1973年 Nikkor-S・C Auto 7枚絞り 5群7枚 マルチコート化
- 1974年 Nikkor 50mm F1.4 7枚絞り 5群7枚 ラバーリング化 最短撮影距離:45cm
- 1976年 New Nikkor 50mm F1.4 7枚絞り 6群7枚
- 1977年 Ai Nikkor 50nn F1.4 7枚絞り 6群7枚 Ai化
- 1981年~ Ai Nikkor 50nn F1.4S 7枚絞り 6群7枚 Ai-S化
中古カメラ店などでは単に「Nikkor-S Auto」とだけ表記されているので、年代にこだわって探す場合は、上記の違いを頭に入れておく必要があります。
私の所有している個体は「6枚絞り」「 銘板はNippon Kogaku Japan」「マウント面の台座ネジは無」のタイプで、シリアル番号から類推すると1962-63年頃製造の初期タイプであることがわかります。
NIKONレンズ史のみならず、標準レンズの歴史を語る、銘レンズだと思います。一本は手元に置いておきたいモデルです。50年以上前のモデルですが、安価に入手できますので、程度のいいものを見つけたら即ゲットでしょう。(個人の感想)
- 構成:5群7枚
- 最短撮影距離:60cm
- マウント:F
- 重量:304g
- 絞り羽根:6枚
- 絞り:F1.4~F16
- フィルター径:52mm
それでは、ここから試し撮りショットのご紹介です。使用カメラはFUJIFILM X-T2です。
ずっしりとした重量感ががオールドレンズであることを主張します。最近のミラーレスカメラとの組み合わせとしては、決して良好な重量バランスであるとは言えませんが、これもオールドレンズの味です。
光学系の程度の善し悪しがレンズ選びの最優先事項ですが、もし、このレンズを手に入れようと思うのでしたら、純正フード付きを見つけられたらラッキーですね。金属製のクラシカルなフードがとても似合います。
このレンズの特徴でしょうか、 ブロンズ像に光が当たったところの反射が印象的です。淡くにじんだように反射しています。
1962-63年頃製造のコーティングですから、当然と言えば当然ですが、印象として発色傾向に派手さは感じられません。レトロで優しい描写です。コーティングが改良された「Nikkor-S・C Auto」になると、また違う描写なのかもしれません。
上:絞り開放F1.4です。下:はっきり覚えてませんが1段~2段絞っています。
好き嫌いがあるかもしれませんが、このレンズの特徴はなんといっても絞り開放F1.4の描写です。開放F1.4ではふんわり、ソフトに柔らかな描写、ピンボケや手振れではありません。
1段~2段絞れば、きっちり描写してくれます。
F1.4でも焦点のあったところはきっちり描写したい....そんなときは、他のレンズを使いましょう。
面白い描写をしてくれるので、開放気味で撮影するときは、まずは開放F1.4で一枚。それから何枚か絞りを変えて数枚。そんな使い方をしています。
使用カメラ紹介: