1968年のタイムピース ~ SEIKO 5 DX made in 1968
写真の時計、両方共、55年も前..1968年に製造された「SEIKO 5 DX(デラックス)」。
デザインが違うだけの似たような商品に見えるけど。
......... 実はこの二つ、開発経緯の異なる全くの別物です。
左は「亀戸(第二精工舎)」製のSEIKO 5、ムーブメントは Cal.5319A (27J) 。
右は「諏訪精工舎」製のSEIKO 5、ムーブメントは Cal.6106A (25J) 。
生産工場は異なり、使用されているムーブメントもそれぞれの工場で開発されたもの。
(少しだけ後述で解説)
55年もの間、いったいどんな時を刻んできたのでしょう。
今も元気に働く時計たち、代々のオーナーにきっと大事にされていたのでしょう。
当時の時代背景に思いを馳せます。1968年頃と言えば機械式時計の低価格化も進み、一般の人たちにも行き渡り始めた時代。しかし、その後10年も経つとクオーツ時計にあっという間に席巻され、この時代の機械式時計達はほとんど姿を消してしまいます。
オークションやフリマアプリで程度のよさそうな個体を数千円で購入。
見つける楽しみ......現代品に負けない精度で動いてくれる個体だと、とてもハッピー。
手をかける楽しみ.....素人なりに研磨剤でせっせと磨いて、きれいに艶出し。
おしゃれな革ベルトに付け替えれば、自分だけのレアウォッチの完成です。
もっともっとお金を出せば、古くて、程度がよくて、ハイブランドの時計も手に入りますが、アンティークはリスク含みの世界。「ハズレ」でもしょうがないと思える出費で楽しみます。
半世紀以上の時を刻み続け...たまたま私のところに来た時計達です。ここで「終わり」にしてはいけないですね。労わりながら大事に使います。
最新型もいいですが、こんな時計の楽しみかたもいかがでしょう。古いカメラやレンズの楽しみ方に通ずるものもあると思います。
少し解説「亀戸」と「諏訪」
1968年当時、SEIKOの商品はSEIKO直系の生産工場「亀戸(第二精工舎)」と、戦災を逃れるために設立された第二精工舎諏訪工場を母体とした生産工場「諏訪精工舎」が競い合うように製品を開発していた時代でした。
「商品ブランドによって製造工場が異なる」という、同じSEIKOブランドなのに工場間で開発を競い合っているというような状態が続いていました。1968年当時になると、この「SEIKO 5」シリーズは「亀戸」と「諏訪」両方の工場で製造されていました。
6時位置のインデックスの上部に刻まれているマークが製造された工場を表してます。
同じ商品名なのに、それぞれの工場で、中身(ムーブメント)が異なる製品を競うように作っていたなんて、今では考えられない時代ですね。