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ベルトを変えて楽しむセイコーファイブ ~ SNSX79J1 & SNKL41J1

スイスの高級ブランドと肩を並べる高級時計メーカーでもありながら、非常に低価格な途上国向け製品も作り続ける稀有な時計メーカー「セイコー」。

今回はその途上国向け製品である超ハイコスパ機械式腕時計セイコーファイブ」の中から「SNSX79J1」「SNKL41J1」を例にベルトを変えて楽しむウォッチライフをご紹介します。高級時計の何十分の一のお値段で遊んじゃいましょう。

 

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1. 「セイコーファイブ」と「セイコーファイブスポーツ」

 セイコーさんの長い歴史の中には「ファイブ」という文字を含むシリーズがいくつも存在します。それについて語りだせば奥が深いんでしょうが、わたしもよくわからないので今回は、現在新品で入手できる2つの「ファイブ」ついてだけ触れておきます。

セイコーファイブ....1967年から製造が続いている低価格の機械式時計につけられたブランド名です。販売当初は日本国内でも正規販売されていましたが、クオーツ時計の低価格化、高性能化には抗えず国内での展開は終了。現在入手できるのは主に途上国向けモデルとして生き残っている海外販売向けモデルです。

・途上国向けモデルなので、曜日表示は「英語+アラビア語」「英語+スペイン語」だったりします。

・搭載されるムーブメントは主に低価格モデル用の「7S系」。

・文字盤にはスーパーマンの胸のマークの文字「S」が「5」になったようなブランドロゴ。

・実勢価格は1万円前後で購入できるモデルが多い。

文字盤のブランドロゴの下に「SPORTS」と記されたスポーティなデザインのモデルが存在する。後述の「セイコーファイブスポーツ」とは別物。ややこしくなるのでここでは詳しい話は割愛。

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左:「セイコーファイブ」ロゴ  右:旧来型「セイコーファイブスポーツ」ロゴ

セイコーファイブスポーツ....2019年にリブランド化された国内/海外両展開モデルです。比較的、派手なデザイン、カラーのモデルが多く、若者向けの機械式時計入門機としての位置づけであろうと思われます。

・搭載されるムーブメントは低価格から中価格帯用の「4R系」。

・文字盤には「S」とも「5」とも読める新ブランドロゴ。

・定価3万円前後からのモデル展開。

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2019リブランド版「セイコーファイブスポーツ」のロゴマーク

2. 「セイコーファイブ」には2つある...「K1」モデル と「J1」モデル

今回紹介している「セイコーファイブ」には「海外(中国)組み立てモデル」と「日本国内組み立てモデル」が存在します。「SNSX79」というモデルを例にとれば、見た目も中身もほとんど同じ、海外組み立てモデル「SNSX79K1」と日本国内組み立てモデル「SNSX79J1」です。「セイコーファイブ」すべてのモデルに「K1」と「J1」が両方存在するわけでは無く、「J1」は一部のモデルに展開されているようです。

「MADE IN JAPAN」.....当たり前と言えば当たり前ですが、「J1」モデルには文字盤と裏蓋に「MADE IN JAPAN」の表記があります。やはりこの表記が有るのと無いのとでは安心感が違いますね。

値段の違い.....アマゾンさんあたりで同じモデルの「K1」と「J1」の価格差を見てみると、おおむね1000円~3000円くらい「J1」モデルの方が高いようです。欲しいモデルが「K1」しか存在しないという理由が無い限り、これくらいの価格差だったら「J1」を選んでしまいますね。

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「J1」モデルの「MADE IN JAPAN」表記

3.「7S26」という昭和的ムーブメント

多くの「セイコーファイブ」に搭載されている機械式時計ムーブメント「7S26」。

・自動巻ムーブメント

・パワーリザーブ:約40時間

・公称精度:+45​秒~-35秒/日

・手巻き機能:なし

・ハック(秒針停止機能):なし

近年、ちょっと高級なムーブメントは新素材を投入してパワーリザーブ60~70時間というのもめずらしくありませんが、かたくななまでに40時間スペック。十分に巻き上げられてないと、外したタイミングによっては半日くらいであっさり止まっていたりすることもあります。手巻きが無いので、そんな時は間違って落とさないように手に持って、振り振り振り振りして動かします。なんとも昭和的というか、レトロというか....進歩という言葉とはかけ離れた存在です。低コストと実用性を追求したムーブメント、それが「7S26」です。

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なぜか裏スケルトンモデルが多い「7S26」ムーブメント

4. ベルトを変えて楽しもう

セイコーファイブ」のステンレスベルトはチープです。1万円そこそこの機械式時計ですから当たり前です。ぱっと見からしてチープという訳ではありません、つけ心地も問題ありません。しかし手に取れば、そのチープさが目についてしまいます。

巻き板ブレス....今時こんなベルトがあったのか、なんかすごくレトロで懐かしい、そんな感じの巻き板ブレスです。これはこれで面白いですが....やっぱり交換です。唯一の利点は、千枚通しのような先の尖った工具が有れば、自分でも簡単に長さ調整ができるということでしょう。

ペラペラ....「SNSX79J1」のステンレスベルトは薄くてペラペラでした。金属なのに重量感というものがありません。もしかしたら女性が使うことも想定して、軽さを重視したのかもしれません。

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純正ステンレスベルト装着時の「SNSX79J1」

じゃらじゃら....「SNKL41J1」のステンレスベルトは重量感もあるし、見た目もいいのですが、コマ同士の組付け精度が低いので、じゃらじゃら音がします。ちょっと残念な出来栄えです。

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純正ステンレスベルト装着時の「SNKL41J1」

「SNSX79J1」も「SNKL41J1」もケースや文字盤に一万円の機械式時計と思わせるチープさは感じられません。....ということは「ベルトを変えて」「雰囲気を変えて」、楽しく遊べる要素が詰まっているということなんです。

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時計本体より値段の高いベルトを合わせて豪華さを演出しようなんて馬鹿なことはいいません。せいぜい4~5千円も出せば、結構、見栄えのいい革ベルトがいくらでも売っていますので、その組み合わせは無限大です。ベルトのデザインでフォーマル寄りにも、カジュアル寄りにもなりますし、文字盤とのカラーとの組み合わせで雰囲気もガラリと変わります。

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そして何より、組み合わせをあれこれ悩んでいる時間が楽しいではありませんか。最初からついていたベルトをずっと使っている人って意外と多いと思うんですけど、結構楽しいですからトライしてみることお勧めします。

5. SNSX79J1

全面ポリッシュ仕上げのケースにチャコールグレイのサンバースト加工された文字盤の「SNXS79J1」。昭和の雰囲気を残したレトロな外観です。海外ユーザーのレビューでは少し外観が似ているせいか「Poorman's ROLEX DATEJUST」(PoormanにもROLEXにも失礼な例えだけど...)と評されたりしてます。ケース径は37mmで、女性でも違和感なく装着できるサイズ感です。

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ラグ幅がちょっと珍しい19mmなのでベルト選択肢が少いかもしれません。チャコールグレイの文字盤も組み合わせるベルト色に悩むかも.....私はグレイ系のアンティークデザインっぽいベルトを合わせています。

6. SNKL41J1

ポリッシュとつや消しに磨き分けられた仕上げのケース、きれいなホワイト文字盤が特徴の「SNKL41J1」です。海外ユーザーのレビューでは、こちらのほうは「Mini GRAND SEIKO」などと評されたりしてます。ケース径は同様に37mmで、こちらも女性でも違和感なく装着できるサイズ感です。

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前述の「SNSX79J1」は合わせるベルトを選ぶ傾向がありますが、こちらはホワイト文字盤ですのでいろんな色のベルトとマッチします。黒/茶系でフォーマルの雰囲気に仕立ててもよし、女性のかたには赤やパステル系カラーのベルトと合わせてもよろしいのでは。私はフォーマルに寄り過ぎなようにブルー系のベルトを合わせています。

7. あえて初心者には薦めない「セイコーファイブ」

セイコーファイブ」のレビューを見ていると「安いので最初の一台、機械式時計初心者にもおすすめ」という書き込みを目にしますが、何個か機械式時計を所有している私としては、あえて最初の一台にはお勧めしません。初めて機械式時計を手にしようとする方は、最初から「安いからどうせこんなものだろう」「この程度性能だろう」と低い期待値で購入する人は少ないと思うんですよね。やはりクオーツにはない「味」のようなものを期待すると思うのです。ある程度、機械式時計に慣れていて、「こんなもんだろう」という割り切りができないとがっかりするリスクがあるのではないかと思います。

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アタリハズレ問題.....一概には言えませんが精度の個体差が大きいという感想をよく目にします。要するに購入してみたものの公称精度(+45​秒~-35秒/日)から大きく外れた個体を掴んでしまったというケースです。中には一日で1分以上進む/遅れるというケースもあるようです。

手巻き/ハック機能無し.....先述したとおり「7S26」ムーブメントには手巻き/ハック機能がないので、秒単位での正確な時刻合わせはできません(時報に合わせて時計を振って動かし始めても、正確に秒単位で合わせることはほぼ不可能)。知らずに買うと、いまどきこんな機能も無いの?とがっかりされてしまうかもしれませんね。

保証問題.....海外販売モデルですから通販サイトで購入するケースがほとんどかと思います。したがって国内正規店で購入した製品と同等の保証が受けられるかというと甚だ疑問です。幸い、今のところ問題のある個体にあたったことは無いですが、少なくとも販売店保証1年以上を謳っているサイトで購入すべきかと思います。壊れていたら即返品・交換は当たりまえですが、多少精度が悪いくらいで返品・交換を申し入れても、どんな対応になるのかは非常に微妙です。「安いから仕方がない」と割り切ってるかたが多いんじゃないでしょうかね。

初心者に勧めるのは.....あくまで主観ですが(セイコーを例にとって)私が機械式時計初心者にお勧めするとしたら、販売店保証/メーカー保証が受けられる正規店で購入されることを前提に、手巻き/ハック機能付きの上位ムーブメント「4R系」もしくは「6R系」を塔載したモデルですね。「4R系」を塔載したモデルは3万円くらいからありますし、中級モデルの「PROSPEX」や「PRESAGE」にも搭載される信頼度の高いムーブメントです。さらに上位の「6R系」となると予算が8万円を超えてきますが、このクラスになるとケースや付属ベルトの仕上げも上質になってくるので満足度の高いモデルを手にすることができるでしょう。

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リッチなルックスに大変身。愛着も沸きます。

という訳で、今回はお安く遊べるウォッチライフの提案でした。